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住職からのお話

第97話

『善事太子(ぜんじたいし)』

 昔、善事という王子がおり、貧民や病人を見ては心を痛め、持っている財宝を彼らに施していました。
 しかし、その財宝にも限りがありました。
 そこで、龍王の宮に行き、望みのものを欲しいままに得ることが出来るという如意珠(にょいしゅ)を求めることにしました。
 善事は弟と共に船へ乗り込み、海にある龍宮へ至って龍王から如意珠を受け取りました。

 ところが、帰りに船が難破し、善事は弟に如意珠を持たせ、自分は沈んでしまいましたが、弟は如意珠の力で助かりました。
 自国に戻った弟は、如意珠によって財宝を欲しいままに得ました。

 しかし、欲しいままに得られるような財宝には価値が無くなり、人々に施しても意味がありませんでした。
 弟は如意珠を地中に埋め、自分の作った五穀や衣服を人々に施し、彼らと共に兄を偲びました。

 『歎異抄(たんにしょう)』には「思いのままに人を助けるのは、極めて難しいことなのです」とあります。

真宗大谷派 唯徳寺

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