第96話
『猿の王さま』
昔、大きなマンゴーの樹(き)がありました。
その甘い実はとても美味で、猿たちの好物でした。
ある日、美食家である人間の国王がマンゴーの実を求め、やってきた。
国王はマンゴーを食べている猿たちを見付けますと、殺せと部下に命じました。
猿たちは人間の国王を説得しようとしましたが、相手は聞く耳を持ちませんでした。
その時、猿の王さまが一本の蔓(つる)草を取り、マンゴーの樹と隣の樹を結ぼうとしました。
しかし、寸前のところで届かず、猿の王さまは蔓草を腰に巻き付け、枝に手を掛けますと、猿たちに命令を下しました。
「私の背を踏み、蔓を伝って渡れ!」
猿たちは王さまの命令に従い、猿の王さまは彼らを救えましたが、背を踏まれて内臓が破れ、静かに息を引き取りました。
一部始終を見ていた人間の国王は、猿の王さまが取った行動に感動し、自分の行いを恥じました。
改心した人間の国王は、猿の王を供養し、善(よ)く国を治めました。
真宗大谷派 唯徳寺