第92話
『二人のパンタカ』
昔、お釈迦さまのお弟子さんにパンタカという二人の兄弟がいました。
兄のパンタカは要領(ようりよう)が良く、難しい教えをどんどん記憶(きおく)し、議論で誰にも負けなくなりました。
ところが、弟の方は要領が悪く、難しい教えを理解できず、議論しても上手い切り返しが出来ませんでした。
そこで、兄は「愚か者のお前は家に帰りなさい」と弟に言いました。
弟は兄に何も言い返せず、自分が情けなくなり、家に帰ろうとしました。
その時、ばったりとお釈迦さまに出会い、わけを話しましたらお釈迦さまは優しくおっしゃりました。
「パンタカよ、出ていくことはない。自分が愚か者であると気が付いているから、真に智慧(ちえ)を求めて生きられるのだ」
そして、お釈迦さま弟のパンタカに一本の箒(ほうき)を渡しました。
「お前はこれからこの箒を使い、朝から晩まで掃除をしなさい。他のことは気に掛けなくて良いが、『塵(ちり)を払え、垢(あか)を除け』と口の中で唱えるのだ」
弟のパンタカはお釈迦さまのおっしゃりたいことが分かりませんでした。
それでも、毎日、掃除をし、ある日、気が付きました。
「自分の心もや不平不満、怒りなどの愚かさで汚れている。そのことに気付かなければ、そもそも、清らかなものを求めないだろう」
自身の体験に基づいた気付きであったためにパンタカも理解できました。
真宗大谷派 唯徳寺