第9話
『お彼岸とは』
お彼岸とは春分ないし秋分を真ん中の日とし、前後3日を合わせた7日間のことで、最初の日を「彼岸の入り」、最後の日を「彼岸明け」と言います。「暑さ寒さも彼岸まで」という諺もあり、残寒と残暑はそれぞれ春のお彼岸と秋のお彼岸を過ぎれば和らぐとされます。お彼岸にはぼたもちとおはぎをお供えしますが、これはどちらも同じもので、牡丹が咲く春のものがぼたもち、萩が咲く秋のものがおはぎと呼び、彼岸花は秋のお彼岸に咲きます。
「彼岸(向こう岸)」とは仏教に由来し、悟りの世界を意味します。しかし、お彼岸は日本だけでしか行われていません。鎌倉時代に日本へ来た中国のお坊さんも、お彼岸を興味深いと述べています。
春分と秋分は季節の変わり目で、仏教が日本にもたらされるよりも前から日本人はご先祖様と神様である太陽に収穫を感謝し、作物の豊饒を祈ってきました。つまり祖先崇拝と太陽信仰が仏教と結び付いたのがお彼岸で、「彼岸」も元は「お日様に願う」と書いて「日願」であったとも言われています。なので、お彼岸は神道の色合いが強い行事でしたが、時が経つに連れ、仏教の行事になっていき、特に浄土教と結び付けられました。
真宗本廟(東本願寺)でも彼岸会の法要をお勤めしています。浄土教は沢山いらっしゃる仏さんの中でも阿弥陀さんだけに救いを求める教えで、その阿弥陀さんは西の彼方にいらっしゃるとされます。そして、春分と秋分の日は真西に太陽が沈むので、阿弥陀さんのいらっしゃる西方極楽浄土に思いを馳せやすいのです。
真宗大谷派 唯徳寺