第84話
『金の耳飾り』
あるところに人気(ひとけ)のない道がありました。
そこは日が傾きますと、薄暗くなっていきました。
その道を父親とその子供が歩いていました。
すると、突然、物陰(ものかげ)から盗賊が襲ってきました。
この時、子供は金の耳飾りをしていました。
父親はこれを盗(と)られてはならないと慌て、耳飾りを引っ張りましたけれども外れませんでした。
「えい、こうなったら!」
なんと、彼は子供の首を切り落としました。
父親が盗賊と戦いますと、直ぐに盗賊は退散しました。
「盗賊はいなくなったし、耳飾りも守れたから、これで一安心だ」
そして、父親は子供の頭を付け直そうとしましたが、当然ながら元には戻りませんでした。
目先の小さな利益や体面ばかり求めていますと、守るべきものを二の次にしてしまいかねません。
それは守るべきものを間違え、子供の首を切った父親と同じことです。
真宗大谷派 唯徳寺