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住職からのお話

第83話

『踏(ふ)まれた口』

 あるところに大金持ちがいました。
 この大金持ちは多くの使用人を抱(かか)えていました。
 主人を喜ばせればチップを弾(はず)んでもらえるので、使用人たちはご機嫌取りに駆け回っていました。
 いつも誰かが主人のそばにおり、主人が唾(つば)を吐きますと、使用人が足で唾を揉み消しました。

 そこに、動きの出遅れがちな使用人がいました。
 手柄を直ぐ他に取られてしまうので、たまには先んじてみたいと思っていました。

 この使用人が、ある時、主人が唾を吐こうとする瞬間に出くわしました。
 すかさず、自分の足で主人の口を踏みました。
 主人は唇が切れ、歯も折れて怒りました。
「何をする!」
「ご主人さまが唾を吐きますと、近くの者が足で揉み消します。私もそうしたいのですが、いつも先を越されるので、唾が口から出る前にしました」

 何事にも時機があり、無理にやろうとすれば、却(かえ)って嫌な思いをします。

真宗大谷派 唯徳寺

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