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住職からのお話

第82話

『黒馬と白馬』

 ある国が隣国と戦争になり、その戦いに一人の兵士が駆(か)けつけました。
 愛馬の黒馬にまたがって手柄(てがら)を立てようと意気込んでいたのですが、いざ戦いが始まりますと、怖じ気(おじけ)づいて戦意を失いました。
 近くに倒れていた兵士の血を自分の顔に塗(ぬ)り、死んだ振りをしました。
 すると、乗ってきた黒馬を敵に奪われてしまいました。

 やがて戦いが終わりました。
 兵士の命は助かりましたが、黒馬がいなくなってしまい、死んだ振りをしている内に奪われたなんて言えませんでした。
 周りを見回しましたら死んだ馬がおり、その尻尾(しっぽ)は愛馬と同じ黒い毛をしていました。
 兵士はその馬から尻尾の毛を切り、愛馬は死んだから尻尾の毛だけ持って帰ってきたということにしました。

 国に帰ってそのように説明したのですが、尻尾の毛を見た人がそれを洗いますと、尻尾の毛は真っ白になりました。
 兵士が尻尾の毛を切った馬は白馬で、戦場で血(ち)塗(まみ)れになり、その血が黒ずんでいただけでした。
 血で敵を欺(あざ)いた兵士は、自分も同じように騙(だま)されたのでした。

真宗大谷派 唯徳寺

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