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住職からのお話

第80話

『麻と金塊』

 その昔、あるところに二人の男がいました。
 ある時、彼らは道に多くの麻が生い茂っているのを見て相談の上、二人で麻を刈り取りました。これを背負って帰り、お金を得ようと考えたのです。

 二人が重い麻を背負ってきますと、道に多くの金塊が置かれていました。一人は麻を捨てて金塊を取りました。
 しかし、もう一人の男は麻を捨てず、金塊を取ろうとしませんでした。
 金塊を背負った男は、麻を背負った男に言いました。
「おい、君、値打ちの少ない麻などは捨て、二人で高価な金塊を背負えるだけ背負って行こうではないか」
 麻を背負った男は、金塊を背負った男に言いました。
「せっかく苦労して刈り取り、重いのを背負ってきた麻なのだから捨てるなんて勿体ない」
 金塊を背負った男は怒り出し、相手の背中にある麻を強奪して地に捨てようとしました。
 ですが、麻は大事そうにしっかり背中に結び付けてあるので、容易に取れるものではありませんでした。
 金塊を背負った男は、相手を度し難いと思って諦め、自分だけ金塊を背負って帰りました。

 金塊を背負って帰った男は、父母から下にも置かずにほめはやされました。
 麻を持って帰った男は、父母から吐き出すように悪罵を浴びせ掛けられました。
 過去の苦労に固執すれば、それすらも骨折り損になってしまいかねません。

真宗大谷派 唯徳寺

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