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住職からのお話

第79話

『老母の知恵』

 その昔、ある国に老人を全て遠くへ捨てる風習があり、一人の男が老年の母を遠くの山に捨てました。

 山へ捨てられるまでの道すがら、息子である男に背負われた老母は、木々の枝を折っていました。
 男は老母がそれを目印にして山を下りるのではないかと疑いましたが、老母を捨てて山を下りようとしたところ、辺りは既(すで)に暗くなっていました。
 しかし、老母の折っていた枝が目印となり、無事に山を下りられた男は、母が息子のために枝を折ってくれたのだと気付かされました。

 それから少し後、王が二組いる馬の母子を見分ける方法はあるか、国中に布告して問いました。
 その布告を知った男は泣き出して言いました。
「草を与えてみてください。母馬は必ず草を子の馬に与えるでしょう。親とはそういうものなのです」
 それを聞いた役人は、男の答えを王に伝え、試してみたところ、実際、その通りになりました。

 王は喜んで何なりと願いを叶えようと言い、男は老人を捨てる風習を止めてくれるよう頼み、その望みは果たされました。

真宗大谷派 唯徳寺

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