TEL:072-687-8667

アクセス
唯徳寺へのお問い合わせ

住職からのお話

第76話

『何の毛か』

 夏のある日のことです。
 二人の子供が川遊びをしていました。
 川に潜(もぐ)ったところ、川底で一本の毛を見付けました。
 子供たちはそれを取って岸に上がりますと、何の毛か言い合いました。
「これは仙人の髭(ひげ)だ」
「いいや、ヒグマの毛だ」
「待って、あそこに仙人がいるよ」
「あの人に聞いてみようよ」

「すみません、これを見付けたんですけれども仙人の髭か、それとも、ヒグマの毛でしょうか?」
 仙人はそれが何の毛か分かりませんでしたが、自分が物知りでないとは見られたくありませんでした。
 そこで、彼は米と胡麻(ごま)を口に含みますと、もぐもぐと噛んでぺっと吐き出しました。
「これは孔雀(くじやく)の糞(ふん)に似ているじゃろ」

 見栄を張るため、話を逸(そ)らそうとした仙人は、的外れなことを言い、余計に恥を掻(か)きました。

真宗大谷派 唯徳寺

唯徳寺イメージ画像