第73話
『100頭の牛』
昔、あるところに牧場がありました。
そこでは100頭の牛を飼っていました。
牧場の主人は牛を100頭も飼っているのが自慢でした。
ある時、そこに虎がやってきました。
主人は何とかして牛を逃がそうとしました。
しかし、1頭の牛が食べられてしまいました。
そのことに主人はがっかりしました。
「食べられてしまったのは1頭だけだが、完全に揃っていなければいけないんだ」
99頭は残っていたのですが、100頭の牛が自慢であった主人は、それよりも1頭いないことの方が気に掛かりました。
そこで、主人は残った牛を深い穴に連れていきました。
牛は全て穴に突き落とされました。
全ての牛がいなくなれば、気に病むことは無くなると思ったからです。
余り完璧であることにこだわりますと、ちょっとした失敗で嫌になり、全てを投げ出してしまいかねません。
真宗大谷派 唯徳寺