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住職からのお話

第70話

『紛(まぎ)らわしい衣装』

 ある国に小さな劇団がありました。
 しかし、演劇の人気は今一つで、団員たちの生活は楽ではありません。
 隣の国には演劇好きが多いので、その国へ引っ越すことにしました。

 隣の国へ行くため、山を越える道を歩いていきます。
 その山には人食い鬼が出るという噂がありましたが、その山道ですっかり夜になってしまいました。
 真っ暗な上に寒く、これ以上は進めないため、山で野宿することとなりました。
 団員の一人は寒さを凌(しの)ぐため、演劇の衣装を着て寝ることにしました。

 数時間後、夜中に別の一人がふと目を覚ましました。
 すると、彼は真っ暗なせいで、演劇の衣装を着て寝た団員を、鬼と見間違えて悲鳴を上げました。
 他の仲間たちも驚いて飛び起き、みんな逃げ出してしまいました。

 団員にとって演劇の衣装は見慣れたものでしたが、人食い鬼への恐怖が衣装を鬼と勘違いさせてしまいました。
 恐怖の念に囚(とら)われますと、自分で自分を苦しめることになりかねません。

真宗大谷派 唯徳寺

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