第69話
『弟子の喧嘩(けんか)』
昔、あるお坊さんが足の病気になったので、二人の弟子に頼みました。
「お前たち、すまないが、儂(わし)の足をマッサージしてくれ」
「かしこまりました」
弟子の一人は右足を、もう一人は左足をマッサージすることにしました。
ところが、この二人は仲が悪く、いつもいがみ合っていました。
マッサージの途中、右足担当の弟子がトイレに行きたくなって席を外しました。
すると、左足担当の弟子が右足担当を邪魔したくなりました。
そこで、師匠の右足を石で叩きました。
「痛がってるな。これであいつは困るぞ」
しかし、左足担当もトイレに行きたくなって席を外しました。
そこへ右足担当が戻ってきました。
右足担当は師匠の右足に叩かれた痕(あと)があるのに気付き、左足担当の仕業(しわざ)であると察しました。
「俺もあいつを同じ目に遭(あ)わさないと気がすまない」
そして、師匠の左足を石で叩きました。
「お前たち、師匠である儂の足に何てことをするんだ」
真宗大谷派 唯徳寺