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住職からのお話

第68話

『宝の番人』

 昔、あるところに貧しい男がいました。
 男は借金をしており、それが溜まりすぎてしまいました。
 それゆえ、取り立ても厳しくなり、彼はそれが嫌になって家を飛び出しました。

 そうして遠くまで来たのですが、そこで金持ちの家らしき豪邸を見付けました。
(あそこに宝があってそれを盗めば、借金を返せるんじゃないか)
 そう考えて男は家の中に忍び込み、ある部屋で宝箱を発見しました。

 しかし、その宝箱は近くに鏡が飾られていました。
 男はそこに映った自分の姿を見ますと、盗みをする緊張から顔が強張っていたので、それを恐ろしげな宝の番人と勘違いしてしまいました。
「空き家なんだと思って入りました。悪気はなかったんです。怒らないでください」
 彼は鏡に謝って逃げ出しました。

 結果的に男は盗みの罪を犯さないで済みましたが、それは鏡によって我が身を省みたおかげと言えるかも知れません。

真宗大谷派 唯徳寺

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