第67話
『半分にされた財産』
昔、あるところに金持ちがいました。
その金持ちが重病になって「もう長くない」と察しました。
お金持ちは二人の息子を呼びました。
そして、「私が死んだら二人で仲良く財産を分けよ」と言い残しました。
程なくして金持ちが亡くなりました。
二人の息子は遺産をどう分けるかで揉(も)め、喧嘩(けんか)をしそうになりました。
そこで、金持ちの病気を診(み)ていた医者が助言しました。
「二人とも落ち着きなされ。喧嘩になるくらいなら取り分の割合など考えず、半分ずつ相続すれば良いだろう」
「素晴らしい提案です」
「その通りにします」
二人の息子は服やお盆、壺(つぼ)、お金、その他何でも切って半分にしました。
医者は遺産を金額の点で半分に分けるよう言ったのですが、何不自由ない暮らしでお金を勘定したことのない二人の息子は、財産そのものを半分に分けることだと思い込んだのです。
何事も一つのやり方しか知りませんと、とんでもない失敗をしかねません。
真宗大谷派 唯徳寺