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住職からのお話

第66話

『夜目(よめ)が利(き)く男と提灯(ちょうちん)』

 あるところに夜目の利く男がいました。
 その男は真っ暗な夜でも良くものが見えました。

 ある日、男が友人を久し振りに訪ねました。
 積もる話に花を咲かせ、ふと気が付きますと、外は真っ暗な夜になっていました。

 男は慌てて帰ろうとしました。
 友人は「夜道は危ないから」と提灯を持たせようとしました。
 すると、男は笑って言いました。
「夜目が利く私に提灯は要らないよ。君も私が夜目の利くのを知っているだろう」
「でも、君は要らなくても相手の人がぶつかってくると危ない。だから、持っていくと良い」
 そう友人が答えますと、男も素直に納得し、提灯を持って帰りました。

 生きていく上で、たとえ自分には不要なものでも、相手には必要なものが数多くあります。
 そして、それが回り回って自身のためにもなります。

真宗大谷派 唯徳寺

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