TEL:072-687-8667

アクセス
唯徳寺へのお問い合わせ

住職からのお話

第63話

『難を逃れた亀』

 その昔、河の岸に面したところに一人の髪結い師が住んでいました。
 髪結い師は沢山(たくさん)の草花を栽培し、花飾りを作って生活をしていました。

 ところで、この河には古くから一匹の大きな亀が住んでいました。
 時々この亀は河から泳いでくると、髪結い師の農園に入って餌を漁り、彼が作った草や花を踏(ふ)み荒らしました。
 一度ならず二度三度と度重なったので、髪結い師はとうとう堪(こら)え切れず、亀を捕らえて箱の中に入れてしまいました。

 そして、いつかは殺して食べようと考え、亀を入れた箱をとても大事に扱いました。
 そこで、一計を案じた亀は、ある日、髪結い師に向かって箱の中からこう言いました。
「私の体には泥が付いています。河で洗わせてくださいませんか? このままでは箱も汚れてしまいます」
 箱を大事にしていた髪結い師は、それが汚れるのを残念に思ったので、言われた通り亀を出し、河で洗ってやろうとしました。

 この機を逸(いっ)すべからずと亀は隙(すき)を見て河の中に飛び込みました。
 髪結い師は恨めしそうに河を見つめることしか出来ませんでした。

真宗大谷派 唯徳寺

唯徳寺イメージ画像