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住職からのお話

第56話

『強欲に命を落とした男』

 その昔、あるところに若い甥(おい)と伯父(おじ)の行商人がいました。

 ある時、二人は他国に旅し、河(かわ)の畔(ほとり)に着きました。
 伯父の方が一足先にその河を渡り、対岸の村に入りました。
 この村に一人の未亡人がおり、伯父の商人がその家を訪ねますと、生活費の足しにするため、夫の形見である金盤(きんばん)を売ろうとして彼に見せました。
 伯父はそれが得がたい宝であるのに気付きますと、未亡人を欺(あざ)いて奪おうと企てました。

「こんなものは何の値打ちもない」
 そして、彼はそのままぷいと出ていきましたが、甥が遅れてその家に辿(たど)りきました。
「何か払い物はありませんか?」
 未亡人があの金盤を示しますと、彼は「これは大変な品です」と驚いて直ちに買い求め、喜んで帰っていきました。

 程なく伯父が再びやってきました。
「あれはつまらない金盤だが、お困りの様子だから安く買ってあげよう」
 未亡人が別の人に売ったことを伝えると、伯父は口惜(くちお)しさの余り倒れ、甥が戻ってきた時には死んでいました。

真宗大谷派 唯徳寺

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