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住職からのお話

第52話

『猫の食べ物』

 その昔、あるところに猫の親子がいました。

 子猫がようやく一人だちできるようになった時のことです。
 子猫は母猫に聞きました。
「お母さん、私は一体どんなものを取って食べたら良いのでしょうか」
この質問に母猫は微笑して答えました。
「私が教えなくとも、人間がお前の食うべきものを教えてくれます。心配しないで出掛(でか)けてみなさい」

 そこで、子猫は夜になりますと、そっと他家へ忍び込み、水を入れる桶(おけ)の間に隠れました。
 すると、家人たちがこんな話をしているのが耳に入りました。
「そこの牛乳や肉などによく蓋(ふた)をし、鶏(とり)や雛(ひな)は高い戸(とだな)に入れ、猫に取られないように注意しなさい」
 これを聞いた子猫は心の中で頷きました。
(なるほど、母親の言う通り私の食うべきものは人間が親切に教えてくれるわい)

 ためになる話は、どこに転がっているか分かったものではありません。

真宗大谷派 唯徳寺

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