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住職からのお話

第51話

『豚と虎の戦い』

 その昔、あるところに豚の王様である一匹の大きな豚がいました。

 彼はある時、輩下(はいか)を引き連れて険しい山道に差し掛(か)かってきました。
 すると、向こうの方から一匹の虎がのそりのそりとやってきました。
 虎は大豚に向かって言いました。
「俺は腹が空いているから、お前の輩下を一匹食べさせろ」
 大豚はさて困ったと思いましたが、輩下の豚たちを守るため、知恵を巡らして答えました。
「君、それでは、しばらく待ってくれたまえ。戦うためには祖先伝来の鎧(よろい)で身を固める必要がある。鎧を身に着けてきたら潔く決戦しよう」
「お前の好きなようにするが良いさ」
 虎はゆったりと落ち着き払ってその申し出を許しました。

 そこで、大豚は豚の便所に行くと、その身を転がし、体中べたべたと糞を塗り込んで虎のところに帰ってきた。
「支度が出来た。さあ、戦うなら戦おう。もし戦うのが嫌なら道を空けろ」
「お前に道を開けてやる。そんな臭いのと戦うのはご免だ」

 大豚は自らを卑しめることで輩下の豚たちを守り、虎は自尊心のせいで負けました。

真宗大谷派 唯徳寺

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