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住職からのお話

第50話

『猿の浅知恵』

 その昔、林に猿たちが住んでいました。

 ある時、猿たちが木の下に井戸を見付けました。
猿たちが中をのぞき込みますと、月が水に影を映していました。
「お月さまが井戸に落っこちている。これを拾い出して世の中から闇というものを無くそうではないか」
頭目が他の猿たちにこう提案しました。
「まず俺さまが木の枝に掴まるから、次の奴が俺さまに掴まり、その次の奴がそれに掴まる。そうして井戸を降りていき、最後の奴が拾い出すのだ」

 猿たちは頭目の提案した通りに井戸を降りていきました。
計画は成功するように見えましたが、最後の猿が水中の月影を掴まえようとした時、全体の重みで木の枝が折れてしまいました。
 そして、猿たちはひとかたまりになって水の中に落ちました。

 やがてどこからともなく神さまの歌うが聞こえてきました。
  月を掴まえて世の中を明るくしようという猿の気持ちは結構である。
  しかし、取れもしない月を掴まえようとしたのは知恵が浅かった。
  その結果が水中への転落である。
  善意も思慮(しりよ)が浅ければ害を及ぼす。

真宗大谷派 唯徳寺

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