第48話
『二匹の猿の王さま』
その昔、ある山に二匹の猿の王さまがおり、どちらも五百の猿たちをその一族としていました。
ある日、一方の猿の王さまが自分の配下の猿たちを引き連れ、人里の近くへ遊びに出掛け、ある村に来ました。
その村に一本の木があり、熟した木の実が美味(おい)しそうな色をして数多く実っていました。これを見た猿たちは王さまに尋(たず)ねました。
「あれを取って食べても良いでしょうか?」
王さまは木の上を見て言いました。
「この木は村に近いが、村の童(わらべ)でさえその木の実を食べないところを見ると、あれは食べられぬものだ」
王さまに言われて猿たちはそうかも知れぬと思い、木の実を見捨てて山に帰りました。
それから後、もう片方の猿の王さまが五百の配下たちを連れ、同じ村に来ますと、配下たちは木の実を見てあれを食べたいと懇願(こんがん)しました。
王さまは深く考えもせずにこれを許し、猿たちは木の実を食べましたが、その内に吐(は)いたり激しい下痢(げり)を催(もよお)したりして死んでしまいました。
何かがなされていないことの裏には深い理由があるのかも知れません。
真宗大谷派 唯徳寺