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住職からのお話

第47話

『琴(こと)の音』

 その昔、ある国王が琴の弾(だん)じられる音を聞き、その美しさに深く感動し、大臣に向かって命令しました。
「あの美しい音を取ってまいれ」

 早速(さっそく)、大臣は琴を持ってきて王に差し出しました。
「この琴からあの美しい音が出たのです」
しかし、王は大臣の言葉を遮(さえぎ)ってこう言いました。
「私はその琴を持ってくるのではなく、あの美しい音を取ってまいれと言ったのだ」
王の言葉に呆(あき)れながらも大臣は説明した。
「王よ、このように琴には色々な仕掛(しか)けがしてございます。これらのものが寄り集まって美しい音を出すのでございます。ですから、音を持ってまいることは出来ません」
「そのような屁理屈(へりくつ)は聞きたくない。私が欲しいものはあくまでも美しい音なのだ。そのような琴などは粉々に壊してしまえ」
 大臣は命令の通り琴を壊して捨てました。

 そして、王さまが永久に美しい音を聞くことは出来ないであろうと哀(あわ)れんだのでした。

真宗大谷派 唯徳寺

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