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住職からのお話

第46話

『新妻の舞い』

 その昔、武芸(ぶげい)百般(ひゃっぱん)を極めた武士がある山の奥に住んでいました。
彼には一人の美しい娘がおり、そろそろ良い婿を選ばねばならないと思いました。武士には二人の青年が弟子になっており、一人は弓に長じ、もう一人は刀に長じていました。

 武士は弓に長じていた弟子を娘の婿にしました。もう一人の弟子は大いに失望し、婿に選ばれた青年だけではなく、自分の妻にならなかった娘のことも逆恨みし、師の家から立ち去りました。武士の家を逃げた弟子は山賊になり、復讐の時が来るのを待ちました。

 ある日、婿に選ばれた弟子が新妻となった師匠の娘と二人で車に乗り、山賊となった青年の住んでいる山道を通り掛(か)かりました。山賊は二人の乗っている車の前に立ち塞(ふさが)がって復讐しようとしました。婿は得意の弓に矢をつがえて放せば、山賊は刀を振るって矢を切って落としました。

 矢は山賊に命中せず、ただ一本が残るだけになりました。すると、妻は急に立ち上がって舞い始め、山賊は美しい新妻の舞いに目を奪われました。その隙に婿が最後の矢を放ちますと、見事に命中して山賊はどっと地上に倒れました。
山賊は師匠の娘を恋敵に勝利して手に入れる戦利品くらいにしか見ていませんでしたが、そのような彼女の知恵に負けたのです。

真宗大谷派 唯徳寺

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