第41話
『物忘れの多いお弟子さん』
仏教は智慧(ちえ)の宗教と言われますが、それは物知りが偉いとされることではありません。
お釈迦さまのお弟子さんに周梨槃特(すりはんどく)さんという人がいました。周梨槃特さんは生まれ付き物忘れが多く、お経を一行も覚えられませんでした。
物忘れが多いのを嘆いた彼は、お釈迦さまに破門を願い出ました。
お釈迦さまは周梨槃特さんを諭されました。
「自分の愚かさに気付いたのだから、お前はもう愚か者ではない」
そして、箒(ほうき)とちり取りを与えました。
「須梨槃特よ、お前はお経を覚えなくて良い。その代わり毎日これで修行場を掃除しなさい。ただし、掃除の間は『塵を払え』と唱え続けなさい。これなら何とか覚えられるだろう」
須梨槃特さんはその日から欠かさず掃除を続け、一心に 「塵を払え、塵を払え……」 と唱え続けました。
そして、ある時にお釈迦さまから 「塵には目に見えるものと目に見えないものとがあるのだよ」 と教えられました。
それを聞いた須梨槃特さんは、自分の心にある塵こそが問題なのだと気付き、体験を通じて学んだ教えでしたので、忘れることがありませんでした。
真宗大谷派 唯徳寺