第4話
『毒の矢』
あるお弟子さんがお釈迦さまに尋ねました。
「この世が終わる時や世界の果てはあるのでしょうか? また、仏さまは死ぬことはないのでしょうか?」
彼はお釈迦さまがこれらの問いに答えてくれないならば、僧であることを辞めますと言いました。
お釈迦さまはお弟子さんに答えました。
「仮にそれらの問いに答えがあったとしても、貴方はそれを理解できるようになる前に命が尽きてしまうだろう。
例えばある人が毒の矢で射られた。みんなは心配して急いで医者を呼んできた。しかし、医者が矢を抜こうとしたら、その人は叫んだ。
『この矢はどのような人が射たのか? 名前は? 背丈は? 出身は? これらのことが分かるまでこの矢を抜いてはならない』
その人が言う通りにしたらどうなる?」
「その人は命を無くすでしょう」
「貴方の問いはそれと同じことだ。世界や仏が永遠に存在するかどうか答えを求める前に解決すべき問題があるのではないか?
少なくとも私はそのような問いの答えを求めるのではなく、生き死にの苦しみや憂い、悩みなどについて教えを説きたいと思う」
お釈迦さんは救いと関係のない教えを説くことはありませんでした。
真宗大谷派 唯徳寺