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住職からのお話

第39話

『二人の老いた修行者』

 その昔、二人の老いた弟子が一つの房に住んでいました。
一人は妻と息子を捨てて出家し、もう一人は妻と娘を捨てて出家しました。 永い間、彼らは諸国を修行してまわりましたが、年老いて昔恋しさに堪えられなくなりました。

 そこで、老修行者たちはそれぞれ妻と子供の住む元の我が家を訪れました。
しかし、妻は突然に却ってきた老修行者の姿を見ますと、大声を上げて罵りました。 夫が妻子を捨てて家を出たので、子供が成人しても伝手がなくて結婚できなかったからです。

 老修行者たちは妻たちの激しい叱責の前にしょんぼりと立ち去るより他なかった。
こうして二人は再び同じ房に帰った。彼らは今までの一部始終をお互い打ち明けた。

 そして、互いの息子と娘を夫婦にすれば、当人同士も幸福になって妻の機嫌も直るのではないかということで意見が一致しました。
ただし、老修行者たちの息子および娘であると正直に言ってしまったら、それぞれに妻が反対するのではないかと心配し、身元については嘘を吐くことにしました。
かくして、それぞれの家を再び訪れた老修行者たちは、でたらめな身元で相手の子供を妻子に紹介しました。

 妻子は大いにその話を喜び、やがて吉日を選んで結婚式が行われました。
息子と娘は気が合い、仲睦まじい夫婦となりましたが、修行者たちは嘘がばれて妻たちに罵られました。
騙さなくても幸せになれたものを、敢えて偽った結果です。

真宗大谷派 唯徳寺

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