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住職からのお話

第38話

『結婚を助けた牛』

 その昔、ある村で父母に死なれ、頼るべき人もない孤児の青年がいました。彼は林で薪を切り、それを村や町で売ったお金で生活していました。

 ある時、青年がとある田んぼの畔で荷を下ろして休んでいますと、村の長者が一人で耕作に従事しているのが見えました。
声を掛けてみれば、長者は兄弟や息子がおらず、自分で働かなければ生きていけないとのことだった。 自分が代わって耕そうと青年が言うと、長者は喜んで彼を雇い、家に住まわせて牛の世話までしてもらった。
青年の働きぶりを見た彼は、たった一人の娘をやろうと思い、青年にそう言った。

 青年は喜んで一心に働いたが、長者の妻はどこの馬の骨とも分からない男に娘はやれないと言った。 それゆえ、長者は青年が催促しても婚礼を延ばし、最後にはそんな約束をした覚えがないと言ったので、青年は長者を役人に訴えた。

 役人はどちらの言い分が正しいか、牛を用いた占いで決めようとした。 長者の家が豊かなのを見ていた青年は、何としてでも婿になりたいと思い、牛に細工をして勝訴した。

 しかし、娘と結婚した青年は、細工したのを後ろめたく思い、長者もその妻も彼に悪いことをしたと反省したので、互いに譲り合って仲良く暮らした。

真宗大谷派 唯徳寺

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