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住職からのお話

第36話

『チェスを発明した王子』

 チェスの元となったゲームは、インドで発明されたチャトランガであるとも言われています。

 ネパールにある小さな国の王子でいらっしゃったお釈迦さまは一人息子ラーフラが生まれますと、王子の位を一人息子に譲られて出家されました。
ラーフラ王子は賢いお子さんに育ちましたが、仏となられたお釈迦さまの息子さんであることは大きなプレッシャーでした。
そこで、生まれに関係なく賢さだけで優劣が付くゲームを発明し、そのルールをあれこれ考えることで気を紛らわせました。

 そんなある日、お釈迦さまが教えを説く旅の途中に故郷へと立ち寄られました。
ラーフラ王子は自分を置いて出家した父親を見返したかったので、お釈迦さまに自分が発明したゲームで遊んではくれませんかと言いました。
お釈迦さまはそれに応じましたが、いざ遊んでみますと、やはりゲームを発明したラーフラ王子の方が有利でした。

 しかし、お釈迦さまは少しも悔しそうではなく、ラーフラ王子は我が子に賢さで劣っているのが気にならないのかと暗に尋ねました。
お釈迦さまは親子の縁が切れたとは言え、二人でゲームに興じるのは楽しいものであると答えられました。
ラーフラ王子は生まれの代わりに賢さで人を差別していたことに気付き、自分も出家してお釈迦さまの弟子となり、ゲームは戦争で優劣を競っていた周辺の国王たちにプレゼントし、どうせ戦うのなら国民を苦しませずにこれで勝負するよう求めました。

真宗大谷派 唯徳寺

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