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住職からのお話

第33話

『鳥と蛇の恩返し』

 その昔、一羽の鳥が井戸の畔(ほとり)で一匹の蛇を見付け、捕らえようと下りてきました。
鳥と蛇は追い掛けたり逃げたりしている内に井戸の中に落ち込みました。
井戸は深くて水があり、翼の濡れた鳥も、肌に粘りの無くなった蛇も自力では抜け出せず、争うどころではなくなりました。

 この時、一人の猟師が井戸の畔を通り掛かり、中に鳥と蛇が落ちているのを発見しました。
鳥と蛇は猟師の姿を見て「どうか助けてください」と声の限り叫びました。
猟師は鳥と蛇を井戸から救い出してやり、鳥と蛇は猟師に礼を述べて立ち去りました。

 それから幾日から過ぎたある日、猟師に救われた鳥は、王宮の花園にある木の上に止まっていたのですが、王妃が庭に落とした首飾りを見付けました。
鳥は首飾りを咥(くわ)え、猟師の家へ飛んでいき、先日の謝礼として与えました。
しかし、王妃が首飾りの無くなったのに気付き、国王が家来たちにあちらこちらと探させた結果、猟師の家も調べられて彼は捕らえられました。

 すると、井戸から救われた蛇は、猟師が入れられた獄舎に行き、自分の毒を治す呪文を彼に教えました。
それから、蛇は国王を咬(か)みました。
国王は体に毒が回って苦しみましたが、猟師が毒の治る呪文を教え、それで治った国王は彼を許し、沢山の褒美(ほうび)を与えました。

 鳥と蛇はどちらも純粋な善意から恩返しをしました。
ですが、それは結果として猟師や国王を苦しめてしまいました。
思うがまま善行に励むのは、難しいことなのかも知れません。

真宗大谷派 唯徳寺

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