第3話
『言い負かされたお釈迦さま』
お釈迦さまは生涯でただ一度だけ言い負かされたことがありました。
お釈迦さまを言い負かしたのは阿難(あなん)さんというお弟子さんでした。
もっとも、阿難さんはお釈迦さまを言い負かせるほど頭の回転が早かったのかと言えばそうではありませんでした。
それどころか何度お釈迦さまから教えを聞いてもその意味が分からなかったので、いつもお釈迦さまの横にいてお世話をし、何度もその教えを聞いていました。
そのため、お釈迦さまの言葉は誰よりも多く知っていました。また、阿難さんは顔が美しかったので、何人もの女性から好かれていました。
そして、ある時、お釈迦さまが説く教えに感動した女性たちがお釈迦さまの弟子になりたいと願い、阿難さんにお釈迦さまへの口添えを頼みました。 当時はお坊さんになったという女性が一人もいなかったので、直接お釈迦さまに頼むだけでは聞き入れてもらえないと思ったのです。 阿難さんは女性がお坊さんになるのを認めてくれませんかとお釈迦さまに頼みました。
しかし、お釈迦さまは男女が一緒にいては何かと問題が起こりやすくなるのではないかと考えて難色を示しました。すると、 阿難さんは自分が覚えているお釈迦さまの言葉を次々と並べ立て、日頃から男女が平等であると言っていたのは嘘だったのですかと問い掛けました。 これにはお釈迦さまも言い返せず、女性のお弟子さんを取るようになりました。
真宗大谷派 唯徳寺