第27話
『三つの餅』
昔、ある夫婦が三つの餅を食べました。
二人で三つですから一つずつ食べますと、餅が一つが残りました。
残りの餅を二人で分ければ良いのですけれども余りに美味しかったので、どちらも相手に渡したくはなく、黙りっこ比べをして勝った方が食べるということになりました。
夫婦がじっと黙っていますと、泥棒が二人の家に入ってきました。
泥棒は家の財産を盗んでいきますが、それを見ても二人は黙っています。
すると、泥棒は調子に乗って奥さんを襲いました。
それでも、旦那さんは黙っていましたので、たまりかねた奥さんが声を荒げました。
「黙っていないで助けて!」
それを聞いた旦那さんは笑いました。
「声を出したお前の負けだから、餅は私のものだ!」
お釈迦さまはこのような話を説かれ、煩悩はこの泥棒のように私たちから仏法を聞く機会を奪ってしまうとおっしゃられました。
自分の奥さんを襲う泥棒に黙っているなどとんでもありませんが、私たちもこの旦那さんのごとく欲望に振り回され、大事なものを見失っていることはないでしょうか?
真宗大谷派 唯徳寺