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住職からのお話

第25話

『宝の瓶』

 その昔、ある町でお祭りが催されました。市中の一家にお年寄りがおり、家の者と共にお祭りを見に行こうとしたのですが、疲れて木の下で休み、「私ははもう歩けないので、みんなが帰ってくるのをここで待つ」と言いました。
その時、帝釈天(たいしやくてん)という神さまが旅芸人に化けて現れ、お年寄りに「私が負ぶってお祭りに連れていきましょう」と言いました。

 お年寄りは喜んで帝釈天に連れられ、天上の世界に連れていかれ、そこで神さまたちのお祭りを楽しみました。帝釈天はお土産に瓶を与えて「これは不思議な瓶で、何でも求めるものが出る」と言いました。宝の瓶を貰ったお年寄りは、いそいそと家に帰りました。

 彼は家の者を集め、それぞれ欲するものを求めさせました。すると、それらが宝の瓶から出てきました。彼らは金や銀など珍しい宝が手に入って嬉しかったので、人を集めて宴を開きました。
 そして、喜びの余りお年寄りは酔いに任せ、宝の瓶を持って踊りました。ところが、手が滑って宝の瓶を落としました。宝の瓶は割れてしまい、お年寄りたちがどれだけ悲しんで元に戻そうとしましても瓶から宝が出てくることはもうありませんでした。

  得られた幸せに酔っていますと、それはたちまちの内に去ってしまいます。

真宗大谷派 唯徳寺

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