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住職からのお話

第24話

『釣瓶(つるべ)を壊した野狐(のぎつね)』

 その昔、一人の年老いたお坊さんが人々のために何か役に立つことをしようと考え、荒野の中に一つの井戸を掘りました。
 ちょうど水のなかった地域でしたので、この井戸を人々は大いに有り難がりました。

 ある日の夕暮れ時、一群の野狐がこの井戸にやってくると、辺りに零(こぼ)れた水を飲んで喉(のど)を潤しました。
しかし、野狐の頭目だけは井戸の傍(かたわ)らにあった釣瓶に頭を突っ込み、その中に残っていた水を飲み干すと、これを地上に投げ付け、粉々に壊して面白がりました。
他の狐たちはこれを見て驚き、頭目を諫(いさ)めましたけれども耳を貸しませんでした。

 明くる日、井戸を作ったお坊さんは、釣瓶の壊されていることを報(しら)され、辺りに野狐の足跡があるのを見付けますと、顔を入れたら二度とは抜けない仕掛けの非常に丈夫な釣瓶を作りました。
 そして、また井戸のところに来た野狐の頭目が釣瓶に頭を突っ込んで水を飲みますと、頭が抜けなくて釣瓶を壊すことさえ出来ず、驚き慌ててしきりに藻(も)掻(が)き、木の陰に身を隠していたお坊さんに捕まえられました。

 自分の快楽や興味を満足させるためだけに他人の迷惑など考えずに行動していますと、やがては結果として自分の身をも滅ぼすことになってしまうのです。

真宗大谷派 唯徳寺

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