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住職からのお話

第21話

『兄弟子(あにでし)と弟弟子(おとうとでし)』

 昔、二人のお坊さんが旅をしていました。彼らは師を同じくする先輩と後輩、つまり兄弟子と弟弟子でした。
二人がとある村の近くに来ますと、道に大きな水溜りがありました。そして、水溜まりの前では若い女の人が困っていました。 女の人は美しい服を着ており、水溜りを渡ろうとすればそれが汚れるからです。対してお坊さんたちは旅の姿でしたので、水溜まりを渡っても大丈夫でした。

 それゆえ、お坊さんのどちらかが背負ってあげれば、女の人は服を汚さずに水溜まりを渡れました。 しかし、弟弟子はお坊さんが女の人と馴れ馴れしくするのは良くないと思いました。それゆえ、女の人を無視して水溜りを渡りました。

 ところが、兄弟子は女の人に声を掛け、背負ってあげましょうかと言いました。女の人が頷いたので、兄弟子は彼女を背負って水溜まりを渡りました。礼を言う女の人と兄弟子は笑って別れました。

 それから、兄弟子と弟弟子はまた二人きりで道を進みましたが、弟弟子がずっと不機嫌そうだったので、兄弟子がどうしたのかと尋ねますと、弟弟子は兄弟子にみっともないことをしないでほしいと言いました。それを聞いて兄弟子は笑いました。私は自分が背負った人が男であるか女であるかにこだわっていなかったが、それに今もこだわっているお前の方がむしろずっと女の人を背負っているのかも知れないな、と。

真宗大谷派 唯徳寺

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