第20話
『鉄の牛車』
あるところに、毎日、重い牛車を引かされている牛がいました。 いつも、一日中、苦しい思いをさせられていた牛は、ある日、とうとうそれが嫌になりました。 牛は自分を苦しめているものを取り除こうと思いました。 そこで、何が自分を苦しめているのか考えました。 そして、ずっと引いている牛車こそ自分を苦しめているものだという結論に達しました。
牛は曲がり角でわざと速く走り、角を曲がる際に勢いを付け、そこにあった岩に牛車を当てました。 牛車は壊れてしまい、牛の飼い主は対策を考えました。 飼い主は頑丈な牛車なら壊されないだろうと思い、鉄の車を作ってもらいました。 苦しい思いをさせられないために牛は牛車を壊したのですが、結局、前よりも重い車を引かされるはめになりました。 しかも、今度は何をしても牛車は壊れませんでした。
このようなたとえ話を説かれたお釈迦さまは、何かを壊したり捨てたりしてもそうする前より楽になるとは限らず、却(かえ)ってより苦しい思いをさせられることもあるとおっしゃられました。
真宗大谷派 唯徳寺