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住職からのお話

第12話

『親鸞聖人お田植え歌』

 水田に稲の苗を植える田植えは、梅雨の時期に集中的に行われる重労働です。苦しい田植えの作業を楽しくするため、田植え歌を歌うという風習があり、それが今も伝えられている寺社も見られます。茨城県水戸市飯富町(いいとみちよう)の真仏寺(しんぶつじ)には「親鸞聖人お田植え歌」が伝承されています。

 真仏寺を開いたのは親鸞聖人のお弟子である真仏(しんぶつ)上人です。ある時、親鸞聖人は真仏上人の招きで常陸国(ひたちのくに)(茨城県)に滞在し、お念仏を布教しようとされました。しかし、その時はちょうど田植えの時期で、農家の人々はお念仏の教えに耳を傾ける暇がありませんでした。親鸞聖人も忙しい人々に無理強いしたくはありませんでしたので、親鸞聖人は衣の裾を引き上げられ、袖を結んでたすきとされ、田の中に飛び込んで次のような田植え歌を歌われました。

 「五劫思惟(ごこうしゆい)の苗代(なわしろ)に 兆載永劫(ちようさいようごう)にしろをして  一念帰命(いちねんきみよう)の種をおろし 自力雑行の草をとり  念々相続の水を流し 往生の秋になりぬれば  このみとるこそうれしけれ 南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏」

 (現代語訳)阿弥陀仏が五劫という長い間、考え抜いて作ってくれた、私たち人間を救う田に、阿弥陀仏を信ずるという種を蒔き、自力に走ってしまう雑草を抜き、絶えず念仏を称えることで苗を育て、時期が来れば稲が収穫できるように私たちも極楽往生できるのが嬉しいです。

真宗大谷派 唯徳寺

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