第116話
『ニグローダ』
昔、黄金色をした鹿が森に住んでおり、ニグローダと呼ばれていました。
森に近い都の王は鹿狩りが大好きだったので、毎日、一頭ずつ矢で射ていました。
ただし、ニグローダだけは黄金色をして貴重であると思い、殺すことはありませんでした。
ある日のこと、王が一頭の牝鹿(めじか)を矢で射ようとしました。
すると、ニグローダが牝鹿の前に現れ、自分を矢で射るよう王に頼みますと、王がニグローダに言いました。
「お前は黄金色をして貴重だから死なずとも良いのだ」
「この牝鹿は妊娠しています」
「それがどうした。別に珍しくもない」
「王さまはどれだけ黄金を積まれたら死んでも良いのですか?」
ニグローダの問いに王は答えました。
「どれだけ黄金を積まれても命には代えられないから無理だ」
「それでしたら、黄金色をした私より新たな命を宿した牝鹿の方が貴重ではありませんか」
王はニグローダとその牝鹿を見逃しました。
真宗大谷派 唯徳寺
