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住職からのお話

第107話

『スジャータ』

 悲しみに沈んでいる一人の男がいました。
 父親が死んだせいで食事も喉(のど)を通らず、仕事をする気も起こりません。
 火葬場から父親の骨を持ち帰り、自宅に庭にお墓を建て、その下に埋めますと、そこで泣き叫んでばかりいました。
 それを男の息子であるスジャータは心配そうに見つめ、何とか悲しみを取り除こうと一計を案じました。

 彼は村の外れで死んだ牛を見付けますと、草と水に持ってきました。
 スジャータは死んだ牛に草や水を与えようとしました。
 それを見た人々は、男のところへ行き、スジャータのしていることを告げました。

 男は息子の頭がおかしくなったのではないかと心配し、スジャータのところへ飛んでいって彼に言いました。
「死んだ牛は起き上がらない。食べ物や飲み物を与えるなど愚か者のすることだ」
「この牛は以前と同じく頭や手足がありますけれども生き返りません。頭も手足もないお祖父さんのことを悲しんでばかりいるお父さんこそ愚か者です」
 スジャータの答えに男はやっと父親の死を受け入れました。

真宗大谷派 唯徳寺

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