第10話
『花祭りとは』
花祭りとはお釈迦様の誕生を祝う祭りです。お釈迦様は旧暦4月8日に生まれたと伝えられているため、花祭りも原則的に4月8日に行われます。寺院では昔からこの日に灌仏会(かんぶつえ)が行われてきました。
灌仏会では色んな花で飾った花御堂(はなみどう)を作り、その中に灌仏桶(かんぶつおけ)を置き、それを甘茶で満たします。中央に誕生仏の像を安置し、その仏像に柄杓で甘茶を灌(そそ)ぎかけます。誕生仏に甘茶を灌ぎかけるのは、お釈迦様が誕生した時、竜が天から産湯として清浄な水を注いだとの伝説に由来します。
甘茶はアマチャの葉を煎じた飲み物です。灌仏会では参拝者にも振る舞われており、甘茶で習字をすれば上達するとも言われ、虫除けの効能もあるとされています。寺院の経営している幼稚園や保育園、仏教系の学校でも甘酒を振る舞ったり稚児行列を出したりしていますが、4月は新年度が始まって多忙なので、月遅れで行われることもあります。
「花祭り」の名称は真宗の僧侶であった安藤嶺丸(あんどうれいがん)師によって大正時代に提唱されました。安藤師は社会活動に熱心で、お釈迦様の生誕を讃える運動として「花祭り」を展開しました。4月8日は桜が満開になる頃だったので、安藤師は「花さかじいさんお釈迦さま」というキャッチコピーを作り、灌仏会を大衆化していきました。
安藤師がアイディアを得たのは、明治時代にベルリンにいた日本人の留学生がお釈迦様の生誕を祝い、その集まりを「花祭り」と呼んだことに由来します。そこにはクリスマスの影響もあり、当初はキリスト教徒も参加しました。
真宗大谷派 唯徳寺