第1話
『お釈迦さまへの贈り物』
昔、お釈迦さまが多くの人から尊敬されているのをひがんでいる男がいました。 そこで、男はお釈迦さまたちがいつも通る道に行き、みんなの前でお釈迦さまを罵ることにしました。 みんなの前で罵れば、お釈迦さまも怒って汚い言葉で言い返し、それを見てみんなは幻滅するだろうと考えたのです。
お釈迦さまたちがやってきますと、彼はお釈迦さまの前に立ちはだかって汚い言葉で罵り、お弟子さんたちはそれに怒りました。
しかし、お釈迦さまは黙って男に罵られました。
そして、男は一方的にお釈迦さまを罵りましたが、どんな悪口を言ってもお釈迦さまは一言も言い返さないので、何だか虚しくなり、
しばらくしますとその場にへたりこんでしまいました。
それを見てお釈迦さまは男に尋ねました。
「もし人に贈り物をしようとして相手が受け取らなかった時、それは誰のものになるだろうか?」
そう聞かれた男は突っぱねるように言いました。
「それは言うまでもない。相手が贈り物を受け取らなかったら、それは贈ろうとした人のものだろう。分かりきったことを聞くな!」
男はそう答えてから直ぐに「あっ」と気が付きました。
「その通り。今、君は私のことを酷く罵ったが、私はそれを受け取らなかった。だから、君が言った汚い言葉は、君が受け取ることになる」
真宗大谷派 唯徳寺